採用が決まって内定をもらったのに、後日「雇用できない」という連絡があって内定が取り消しになった!
正式な契約書などを交わさず、口約束だけで採用を言い渡されただけだと、強く出れずに泣き寝入りするしかない?
中小規模の会社や、フランチャイズの店舗などの採用でこういうトラブルが増えています。
このような場合、会社に対して取れる手段は何かないのでしょうか。
内定が取り消された場合どうすればよいのか
ここで以下の3つのポイントが重要となります。
- 内定後でも契約の解除は可能
- ただし、不合理な理由での内定取り消しはできない
- 地位確認請求や損害賠償請求が認められることもある
内定してから実際の就労開始までの間、内定者と会社は、「始期付解約権留保付労働契約」が結ばれた状態にあると考えられます。
始期付解約権留保付労働契約(しきつきかいやくけんりゅうほつきろうどうけいやく)とは、採用が内定した際、会社側と内定者の間で締結される契約の1つです。
ちょっと難しいのですが、これは就業の開始日と解約権留保という2つの条件が付いた労働契約のことで、「始期付」とは就業開始日を予め決めておくことで、「解約権留保付」とは、就業開始日までの間、会社側は内定者との契約解除をできる権利のことをいいます。
ですから内定者は内定をもらった日から従業員となり、会社とは、入社までにやむを得ない理由が発生した場合に内定を取り消しすることができる条件付きの労働契約を結んでいるということができます。
始期付解約権留保付労働契約が成立する場合
では、内定後に一方的に内定を取り消されてしまうのは仕方がないことなのでしょうか。
内定といってもいろんな形式があるので、それぞれ具体的なケースに沿って判断する必要があります。
会社側が「採用」を、応募者が「入社」を、とそれぞれが意思を示していれば「始期付解約権留保付労働契約が成立」したといえます。
この契約は、正式な契約書を交わさなくても口約束だけでも成立します。
例えば、面接へ行って、
「採用しますので、来週から来てください。」
「はい、わかりました。」
というやり取りがあるだけでも成立していると言えます。
ですから、会社側が何らかの理由で内定を取り消すこともできるということになります。
しかし、ここで重要となるのが、内定を取り消すやむ負えない理由です。
この理由は「客観的に合理的で社会通念上相当に限られる」といった規約があります。
内定前に知っていたら採用しなかったといえる「客観的に合理的で社会通念上相当と認められるような重大な事由」でない限り、内定の取り消しは認められません。
例えば、健康状態や経歴を偽って申告した場合などが該当します。
ここでは「客観的に合理的で社会通念上相当」であるか、がポイントになります。
健康状態が理由だったとして、実は通院していたとしても、すぐに復帰でき、通常通り問題なく就業できる状態であれば、業務への影響はありませんので、内定を取り消す、やむ負えない理由にはならないといえます。
経歴を嘘ついたからといって、それだけで「客観的に合理的で社会通念上相当」な理由となるわけでもありません。
その内容にもよりますが事実を知ったことで内定者の印象が多少変わって見えるでしょう。
しかし、それだけで内定取り消しを判断することは難しいといえます。
ですから、「客観的に合理的で社会通念上相当」に該当するような重大な理由以外での内定取り消しは、認められないと考えられます。
それで内定取り消しした場合は、地位確認請求や損害賠償請求が認められることもあります。
内定取り消しは違法?
先ほどお伝えしたように、「客観的に合理的で社会通念上相当」に該当するような重大な理由でない限り、地位確認請求や損害賠償請求が認められることもあるため、会社側の都合による内定取り消しは違法といえます。
例えば、健康状態については、内定後に突然の急病に見舞われて入院となってしまった場合、経歴については業務に関わる重要な部分を詐称した場合などは、合理的な理由となり、内定を取り消すことができるのです。
また、内定後に自分よりも良い人材が現れたことで会社側が内定を取り消すような場合は違法です。
内定を取り消されたら
会社側のやむを得ない理由によって内定を取り消されてしまったらどのような対応をすれば良いのでしょう。
そもそも、やむ負えない理由とはどのようなことなのでしょうか。
これはもう会社に聞くしかありません。
もし、内定を取り消されてしまったら、会社にどのような理由で取り消ししたのか確認しましょう。
合理的な理由がなければ、内定取り消しは無効となり、その会社で働くことができます。
労働契約上、その会社で働く権利があることを確認する地位確認請求ができるのと、合理的な理由のない内定取り消しは違法なので、損害賠償請求が認めることができます。