業務が立て込み、深夜まで残業をしなければならないということありませんか?
帰りたくても、会社から要求され、断れずに従う人も多いですよね。
たまになら我慢できても度々あると体力的、精神的にも辛くなります。
こうした深夜の残業を断ることはできないのでしょうか。
もし断った場合どのようなことになるのでしょうか。
深夜の残業を断ったら?
会社から残業の要求があり、もしそれを断ったらどうなるのでしょうか。
また、断っても良いものなのでしょうか。
法律的に解釈する場合、以下の3点について理解する必要があります。
- 残業の指示は労働基準法と労働契約のうえで成り立つ
- 一時的に必要な残業か、または労使協定(36協定=さぶろくきょうてい)の締結が必須
- 権利濫用もあり得る
簡単に言えば、労働契約と労使協定があれば残業させることは問題ない。というのが基本の考え方です。
会社が深夜残業をさせるには労働基準法の要件を満たすことと、会社と働く人との労働契約への明記が必要です。
また、残業が多いなら労使協定を締結する必要があります。
労使協定とは、簡単にいえば会社と労働者が交わす協定のことです。
通称さぶろく協定(36協定)と呼ばれています。
会社が従業員を働かせる時には、原則、労働基準法を守らなければなりません。
しかし、会社ごとにやり方やルールは様々で、すべてを労働基準法で満たすことは難しいのが実情です。
例えば、時間外労働や休日出勤などは労働基準法では認められていません。
しかし、会社や職種によってはそうしたイレギュラーな対応が必要になる場合があります。
そういう時に、時間外労働や休日出勤を認める内容の36協定を結んでいれば、例外として認められることになります。
労働基準法は会社の味方?
まず、労働基準法の要件を満たしていないと残業命令は出せません。
残業命令が出せる条件は以下の通りです。
- 会社側は、労働基準監督署に届出をし、許可されれば必要な限度の範囲内に限り、時間外労働・休日出勤をさせることができます。(ただし災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定)労働基準法第33条第1項による
- 一時的や臨時の残業でない場合、会社と労働者で交わす36協定で時間外労働・休日出勤ができる規定を定める(労働基準法第36条第1項)
また、36協定には以下の内容を含めなければなりません。
- 時間外労働や休日出勤が必要な具体的な理由
- 業種
- 社員数
- 時間外労働と休日出勤のそれぞれ時間や日数の上限
- 有効期限
労働基準監督署に36協定の届けを出さずに労働者に時間外労働をさせた場合は労働基準法違反となります。
こうやって見てみると残業させるにも色々と制約があって簡単には出来ないようにも見えます。
しかし、見方によっては会社側が労働基準監督署に事前に届け出さえしていれば、深夜残業であっても法律違反にはならないということになります。
じゃあ、会社は残業させ放題じゃないか。。。
働く側はそれに従うしか無いのか。。。
と思われるかもしれませんが、一応以下のように時間の上限が決められています。
期間 | 上限 |
---|---|
1週間 | 15時間 |
2週間 | 27時間 |
4週間 | 43時間 |
1ヶ月 | 45時間 |
2ヶ月 | 81時間 |
3ヶ月 | 120時間 |
1年間 | 360時間 |
まあ、上限と言っても1週間で15時間なので、1日3時間残業を週5日とかは合法の範囲内ということになりますね。
しかも、一時的なものであれば36協定に「特別条項」をつけることでこの時間上限を越えても良いことになっています。
その特別条項にもさらに上限があって、これ以上はダメというラインもあるのですが、なんやかんや結局長い時間残業させても良いということになってしまいます。
ですので、労働基準法については、それほど僕らのような働く人達を守ってくれる法律にはなってないというのが実情です。
ただし、例外もあって以下のような立場の人は厳しい残業から逃れることができます。
- 満18歳に満たない者を深夜労働(22時から5時)に就けることはできない(交代制による深夜労働の場合は満16歳以上の男性はOK)
- 妊産婦は深夜労働に就けることができない
- 未就学児、要介護者のいる家庭の労働者は要件を満たしていれば深夜労働の免除が受けられる
「うちでばあちゃんの介護しなきゃいけないんですよ」
って言っておけば残業命令は回避できるという解釈もできるわけです。
残業させる理由はなんでもいい
会社は残業をさせるために、残業の理由を明確にしなくてはなりません。
しかし、時間外労働の理由としては、細かい決まりはなくて、大まかな理由で良いとされています。
例えば、業務上必要なやむを得ない理由、納期に間に合わない、業務上の目標達成のためなどといった記載でも大丈夫とされています。
「業務上の目標達成のため」とかって言ったらなんでもOKって言ってるのと一緒なんですよね。
会社に甘くて、働く人にキビしい法律になっているわけです。
権利濫用とは
ここまで時間外労働についてお話しましたが、要件を満たしたからといって必ず残業命令が有効となるかというとそうでもありません。
よく言われるのは権利濫用に当たる場合は、残業の命令が出来ないとなっています。
例えば以下のような場合です。
- 業務上必要性がない残業
- 不当な理由や目的の残業
- 労働者が不利益となる残業
このような場合、権利濫用(正当な権利の範囲を逸脱した状態)となるので、残業命令に必ずしも従う必要はないとされています。
しかしながら、これも結構ザルで、あんまり働く人を守ってくれるようには出来ていません。
この権利濫用については、日立製作所武蔵工場事件というのがありまして、この事件は、
工場長が、「製品の品質が低下したから残業してやり直せ」と命令をして、それを拒否した工員がクビになったという事件です。
裁判でも争われたのですが結局は、工員が敗訴となり、会社の命令は合法ということになりました。
このとき争点となったのが「権利濫用」があったかどうかとうことだったのですが、それは認められず会社の残業命令は問題なかったということになりました。
残業を拒否する社員はクビにしても問題ない
残業や時間外労働を取り巻く現状をみて、法律を盾にしてもそれほど働く人を守ってくれるようにはなっていません。
残念ながら、残業を拒否したらクビにしても問題ないというのが現状です。
結局の所、僕ら働く人達からすると、自衛の手段は無茶な残業命令してくる会社では働かないということに尽きるのではないでしょうか。
もし、無理な残業命令が続くようであれば、早目に転職の準備をしておきましょう。
そして、仕事を辞めざるを得なくなっても大丈夫という状態にしておくことが最も有効です。