友達から相談された話なんだけど、彼の会社は残業が多いらしい。
朝9:30に出社して、お昼に1時間休憩があって、その後仕事に戻って18:30が定時。
でも、18:30に帰宅できることはなくて、早い日でも20時か21時くらいまで仕事がかかって、遅い日だと0時を超える日もあるという。
「残業多くて大変そうだね。
でも残業代ついて収入は増えそうじゃない。」
「それが残業代はつかないんだよね・・・。年収ベースだからいくら働いても給料は変わらない」
「は?」
なんと、彼は月に60時間以上ものサービス残業をしているというのだ。
サービス残業が発生する現場の事情
知っての通りサービス残業は違法だ。
その事を本人に伝えると、どうもその認識はあるらしくそれでも仕方なく続けているということらしい。
なんでそんな事になったのか不思議に思ったぼくは、詳しく話を聞いてみた。
その会社は制作系の会社で、定時というものが形骸化していて、そもそも残業をしているという考えがあまりないらしい。
その友人が上司にもう少し早く帰りたいと話をしたところ、
「こんなに早く帰るやつはいないぞ。
仕事がないなら自分で仕事を作るくらいじゃないと伸びない」
みたいなことを言われたそう。
完全にブラックな会社の言い分だ。
また、その状態をなんとかしようと、残業代をつけるか、残業を減らすかして欲しいと上司に進言をした社員もいたらしいのだけど、
「そんな考えのやつには仕事はさせられない」
みたいなことを言われて、その後、ほとんど仕事を回して貰えなくなって、定時になったら
「もう帰っていいぞ」
と言われるようになったそうです。
その社員はいたたまれなくなってその後、退職したそうだが、友人はそれを見て怖くなって、上司には逆らえなくなってしまった。
サービス残業という名の無給労働
側からみると労基署に相談するなり、弁護士通して法的手段で残業代を取り返すなりすればいいじゃないかと思うのだが、仕事を失うかもしれないという不安が先にあって、なかなか行動は起こせないということにようだ。
確かに、ぼくは部外者なのでいくらでも正論は言えるのだけど、もし訴える場合、そのリスクや面倒臭さを乗り越えるのは当の本人なので、それを思うと強くも言えない。
ましてや、その会社もやっと入った会社で、仕事自体も彼がこれからも続けて行きたい仕事ということなので、どうしても我慢せざるをえないような状態にあるということらしい。
そんな彼の会社も、最近少し言うことが変わってきたそうだ。
「時間外労働が増えると人事がうるさいから残業するな」
ということだ。
確かに最近は、残業の多さから体を壊す人や、最悪自殺にまで発展するケースも増えてるので、流石に対応を迫られたのかなとおもったのだけど、
「残業はするな。でも家でやれば出勤にならないから家でやれ」
と・・・・。
ぼくにとっては信じられないような話なのだけど、このような話は少なくないようで、特に制作系の会社やデザイン会社など、仕事の性質上時間で区切りづらい職種でよく起きているらしい。
断っておくけど、ぼくも残業が全てダメだとは思っていない。
自分でも力を入れたい仕事だったり、何としても結果を出したい仕事がある時は、残業してでもやり遂げるという考えがあってもいいと思ってる。
でも、残業代が支払われる残業と、サービス残業は全くの別物。
サービス残業は、無給で働かせて人の時間を奪うことになるので当然違法行為で、あってはならない事だ。
なんでこんな事が起きるのかというと、働く人の立場が弱いからという事なんだろうと思う。
働く人にとっては他に選択肢がないという弱い立場に立たされていて、会社もその事をわかっているから良いように使われてしまうという構図があるのだと思う。
労使間の健全な力関係とは
ぼくのようなフリーランスだと、仕事の条件はあくまで発注側、受給側、お互いの綱引きで決まる。
例えば、条件を値切られて報酬が安くなったり、単価は変わらずとも工数が増えたりすれば、その条件で受けられるどうか判断して、合わなければお断りする事になる。
発注側は、仕事が進まないと困るので、もっと安くやってくれる業者を探すか、単価を上げるか、プロジェクト自体を諦めるしかない。
この受給関係が、市場の相場を作っているので、必ずしもお金をもらう側が、払う側の言いなりになるということではなく、ある程度フェアな関係で取引ができるというわけだ。
これが、市場原理のいいところ。
先に話した友達の例でいうと、この市場原理が働かずフェアでない取引を強いられている状態にあるといえる。
じゃあどうすればいいのかって話だけど、
結論からいうと、ぼくはその友達に転職を検討することを進めた。
上司や社長に言っても改めてくれないし、ましてや法的手段にでるような事を荒立てたくもないということであれば、転職を検討することが最善だと考えた。
つまり、転職先を見つけることで彼に選択肢を作ってあげて、会社との取引の力関係のバランスが取れるようにしようという考え方だ。
転職という選択肢
実際に転職するかどうかは別にして、転職先が選択肢としてあるという状態になるだけでも立場が強くなるはず。
転職活動を通じて、自分の市場価値を知ることもできるし、今より良い環境や条件で働くことができる可能性もある。
聞いて見たところ、3年前に就職してから転職しようと具体的に動いたことはなくて、ぼくの説明にも納得してもらえたようなのでいくつか転職エージェントを紹介した。
転職エージェントは、転職情報サイトと違って、一人一人の特性に合わせて求人を紹介してくれたり、転職活動のアドバイスをしてくれるエージェント(代理人)が付くのがその特徴だ。
また、転職エージェントでは、オープンにされていない求人案件なども多数持っているので、求人サイトなどで探すより効率的に転職先を探すことができる。
しかもこれらのサービスが全て無料で利用できる。
なぜかと言えば、エージェントには企業側から報酬が出ているので、働く人からはお金をもらわずやっていく事ができるのだ。
その友達はこの転職エージェントを使って、仕事を続けながら転職活動をしばらく続けた。
彼はすでに実務で3年以上の経験があり、実績もあったので転職先は割とすぐに見つかったみたいだ。
同じ失敗が無いようサービス残業の有無についても事前に確認を取ったらしい。
「御社はサービス残業はありませんよね?」
って面接で直接会社側の人に聞くのは聞き辛いけど、エージェントに確認をとってもうことが出来たのもよかったと言っていた。
結果として、3ヶ月後に彼はその会社を退職して、新しい職場に移った。
仕事内容は、希望した職種で、給料面もほぼ同額、なによりサービス残業はなく、もし残業が必要な時もしっかりと手当がつく職場なので満足いく転職だったようだ。
手取りは増えて、勤務時間は減ったということなので、彼は正しい選択をしたと思う。
本当なら訴えて残業代もぶんどってやったらいいと思ったけど、彼曰くその会社も悪いことばかりでなく育ててくれた恩もあるのでそこまではしなくていいということだそうだ。
おそらく彼にはそれなりの市場価値があったということなのだろう。
それを知らずにいれば、会社側の良いように搾取され続けたかもしれない。
実際、会社を辞めたいと上司に言った時、散々引き止められたらしい。
その会社は、大事な社員を一人失ったことを後悔しているかもしれない。
でも、なかなか体質を変えることは出来ないようで、今でもサービス残業が常態化しているようだ。
良くないことだけど、サービス残業はそう簡単にはなくならないのだろう。
各々自衛して、本当に自分の人生に特になる働き方をしていくべきでしょう。
そのためには、常に転職活動を通じて自分の市場価値を知っておくのと、いざという時は転職できるという選択肢を持つことが有効だ。